約400万年前から1万年前頃のマンモスが生息していた時代にさかのぼりましょう。
このころ、マンモスやナウマンゾウ、ヒグマ、毒蛇などが生息し、人々の食料などになったこともありますが、とても怖くストレスを与える存在だったと考えます。
人々が住む集落、野生の動物生活エリアの切り分けが無い世界での生活は、
危険と隣り合わせの生活の中では、大きなストレスがあったことでしょう。
ストレスって何だろう?
「ストレス」とは、外部からの刺激によって体内に生じる反応や緊張状態ののことで、原因となる刺激などをストレッサーと言いストレッサーも含めてストレスという場合があります。
ストレスの要素
一般的には、ストレスの原因(ストレッサー)とそれによって生じた体や心のひずみ、ひずみを戻そうとする心身の反応(ストレス反応)をまとめて「ストレス」と表現されることが多くあります。
風船やゴムボールを指や手の平で押しつぶした状態をイメージしてください。
このとき風船やゴムボールをゆがませている指や手の力が「ストレッサー」で、風船やボールが歪んでいる状態を「ストレス反応」だと考えれば分かりやすいかもしれません。
このように、心身に負荷がかかっている状態を「ストレス」といいます。
ストレスは私たちの体や心、行動にさまざまな影響を与えることが分かっています。
ストレスのシグナルが自分への警告として発せられ、それに伴って私たちの心身にはさまざまな症状が現れるのです。
ストレスの種類
体や心に影響を及ぼすストレッサーには、大きく3つ種類があります。
①「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑、眩しいや暗い)
②「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、アルコールなど)
③「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)
普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」を指すことが多いです。職場では、仕事関係、対人関係など、さまざまな要因がストレッサーとなりえます。
ストレスの原因
ストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。外部からの刺激には、天候や騒音などの環境的要因、病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因があります。つまり、日常の中で起こる様々な出来事が、ストレスの原因になります。たとえば、進学や就職、結婚、出産といった喜ばしい出来事、また、逆に辛く悲しい出来事も刺激となり、ストレスの原因になります。
ストレスによる影響
ストレスと言っても、すべてが悪い影響を与えるわけではありません。
適度なストレスは、それを乗り越えたときに達成感をもたらしてくれます。
また、自信を持つことや成長する糧になることもあります。
しかし、過剰なストレスは心身にさまざまな不調をもたらすことがわかっています。
心理学者ロバート・ヤーキーズとジョン・ディリンガム・ドッドソンが1908年に提唱した「ヤーキーズ・ドットソンの法則」では、「強い電気ショックを流すマウス」「弱い電気ショックを流すマウス」により、学習の成果を比較しました。その結果、「強い電気ショックを流すマウス」は学習効果が現れず、「弱い電気ショックを流すマウス」は効果的に学習することがわかりました。このマウスを使った実験から、適度なストレスは、学習に効果的であることがわかっています。
体の変化
体に現れる悪い影響としては、頭痛や肩こりや下痢、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や円形脱毛症などを引き起こすこともあります。
心に現れる症状としては、不安やイライラ、気分の落ち込み、不眠などがあり、重症化するとうつ病など深刻な心の病につながることもあります。
さらに、ストレスは飲酒量の増加、過食、買い物依存など行動面に現れることもあり、
このような生活習慣の乱れが生活習慣病の発症や悪化につながることもあります。
また、ストレス自体が高血圧や糖尿病のリスクを高めるなど生活習慣病の危険因子としても知られています。
・「体への影響」
【心への影響】 肩こり/目の疲れ/疲労/脱毛/頭痛/腰痛/不眠/自律神経の乱れ 等
【行動への影響】不安/落ち込み/イライラ/怒り/気力や集中力の低下 等
【生活の乱れ】 暴飲暴食/散財/過度の飲酒/ギャンブル/暴言暴力 等
・「体の病気」
自律神経失調症/胃や腸など消化器の病気/血圧や心臓など循環器の病気/免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、免疫の働きが過敏になってアレ ルギー症状が重くなったりする/生活習慣病 など
・「心の病気」
不安障害/アルコール依存症/パニック障害/PTSD(心的外傷後ストレス障害)/うつ病 など
ストレスの歴史
「ストレス」とは、人間の進化過程のなかで形作ってきた、生き残るために必要不可欠な仕組みの一つなのです。
太古の時代の人たちが、草原を歩いているときに、不運にも巨大なマンモスに突然出くわしてしまった場合を想像してください。私たちは驚き、心臓はドクドクと動き、手足は発汗、筋肉は緊張し、目の瞳孔は大きく見開きます。
巨大なマンモスに気づいた瞬間、マンモスから全力で逃げだしたり、場合によっては戦うために、体が戦闘の準備をしてくれているのです。これが「ストレス」の反応であり、約100年前に「ウォルター・B・キャノン博士(1871~1945 / アメリカの生理学者)」が生物の恒常性(ホメオスタシス※)を提唱しました。
[※ホメオスタシス:生活体が生命を維持するために自律系や内分泌系の働きを介して体内平衡状態を維持する]
「ストレス反応」を起こすことができた個体だけが、危険を乗り越えて今まで生き残ってきました。ストレス反応の中では、体の中で「脳、ホルモン、自律神経」が連携し、調整し合うなど、とても良くできた仕組みが起きています。
現在でも、ストレス反応により、怪我を避けるための判断をとっさに行ったりと危険を回避することに役立っています。
太古の時代には、そのようなストレスが長期間に渡って頻繁に続くようなことはあまりなかったかもしれません。感染症など疫病の影響がもっと深刻だったため、ストレスの影響が体に生じるほど寿命も長くなかったと考えられます。
当時は必要であった戦うための仕組みも、現代ではむしろ悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。
例えば、筋肉に多くの血液を送るために心臓が鼓動し続けることは、高血圧に繋がり、敵をしっかりと見るため集中することで、目が見開き、まばたきの回数が減り、ドライアイになります。戦うことには不要な胃腸の働きを抑えることは、消化不良となるという状態になります。
さらに、体はいつでも危険に対処できるように、目の前に巨大なマンモスがいなくても体を常に覚醒状態が続くことになります。
この状態が続くと、不眠、疲労蓄積、過剰な不安といった状態に繋がり、有限である心身のエネルギーを使い果たし、やがて調整機能が機能しなくなりバランスが崩れ、メンタルヘルス不調へとつながってしまいます。これを「慢性ストレス反応」といい、メンタルヘルスだけではなく、糖尿病やがんなど実にさまざまな病気の原因となります。
このように、適度な量のストレスであればむしろ生きていくためには必要なものだとも考えることができます。一方、長期に亘る過剰なストレスであれば、それが慢性ストレス反応を生じさせているかもしれませんので、そのストレスを軽減するための対処をしなければならないのです。
太古の大昔から人々は、恐ろしい動物、原因不明の病気、大自然の驚異などから大きなストレスを与えられたことでしょう。
しかし、そのことへの問題自体は解決できなくても、対処方法は少しずつ確立してきたと思います。(文字で残っていないのが残念ですが、一部のことは子々孫々伝わっているのではないでしょうか)